
家族に認知症の初期症状が表れた時には、どうしたらよいのでしょう。あらかじめ、いざという時の対応方法を知っていれば、慌てずに済みますね。長寿社会の日本、いつ、自分の家族に起こっても、不思議ではありません。適切な対応方法を知っていれば、慌てずに済みます。また、いつもと違って、急にお金に執着し始めたりする時には、認知症の初期症状の場合があるようです。対応方法を理解して、ご本人と向き合いたいですね。
認知症の初期症状が表れた時の対応方法!
何だか、今日は言っていることがおかしいとか、何度も同じことを聞いてくるとか、歩き方もいつもと違うなど、何か小さな変化に気が付いたら、怒ったりせずに、その変化に合わせて、こちらも上手く対応しましょう。
認知症の初期症状とは?
認知症のごく初めの頃は、「もの忘れ」や「理解力・判断力の低下」などです。
*よくある認知症の初期症状
- 記憶障害: もの忘れやもの取られ妄想
- 実行機能障害: 料理等の複雑な作業ができなくなる
- 見当識障害: 現在の年月や時刻、自分がいる場所などの基本的状況を把握できなくなる
- 認知機能障害: 言語障害(失語)、先行・失認など
これらの症状をへて「思い込み」が激しくなります。「思い込み」は本人にとって事実であり、決して否定してはいけません。
加齢によるもの忘れは自覚症状があるのに対して、認知症はもの忘れへの自覚症状がなくなります。また、認知症は、完治することが難しいため、早期発見が重要です。
認知症を発症している方は、「自分は認知症だ」と自分で判断できないため、家族や周囲のサポートが欠かせません。
認知症による思い込みが激しい時の対応方法
今回は、物盗られ妄想、見捨てられ妄想、幻覚や幻聴、嫉妬妄想の4つの対応方法です。それぞれの対応方法について詳しく説明します。
盗まれた!と訴える場合 ➡ 物盗られ妄想に分類
特に女性に見られるケースが多い症状で、比較的初期段階であり体が自由に動く時期に「ものを盗まれた!」と訴えます。訴える内容としては以下のような場合が多くなっています。
- 持っていた財布が無くなった・盗まれた
- 嫁(夫)が自分の大切なものを盗んでいく
- 自宅の鍵を何者かに隠された
これらの症状は、認知症による記憶障害が進行している結果である場合と、認知症になっている事実を自分自身が認めたくない気持ちが原因です。
認知症が原因で、どこかにものを置いている事実を忘れているだけでも、盗まれたと認識してしまいます。さらに、「忘れている」事実を認めたくないがあまりに「盗まれた」と発想が転化してしまう場合も多くあります。
【対応方法】
- 失ってしまったと不安に思う気持ちに寄り添うことが重要
- 否定をせず「盗まれた」前提で一緒に失くしたものを探すと、物盗られ妄想は緩和されます。
見捨てられたんだ!と悲しんでいる場合 ➡ 見捨てられ妄想に分類
- 比較的初期段階であり判断力がまだ保たれている時期に多く見られる症状。認知症が進行するにつれて自分で判断できなくなるので周囲のサポートが必須。
- サポートを受けていると「周囲の人に頼りきりになってしまっている」と自分を責めてしまい、負い目を感じる方が多くいます。
- 見捨てられ妄想は自宅介護よりも施設介護を受ている方の発出頻度が高くなっています。理由は「家族に見捨てられて施設に入れられた」と感じるからです。
- 自宅介護でも家族の外出を頻繁に見てしまうと「自分はもうこの家族には必要ない」と感じてしまい、見捨てられ妄想の症状に悩まされてしまうケースがあります。
【対応方法】
- 今抱えている寂しさや悲しみを取り除く方法が効果的です。
- 「自分は必要なんだ」と自信を取り戻してもらいます。
- 本人に役割を持って過ごしてもらうと、「自分はここにいてもいい」「必要とされている」と感じやすくなります。
幻覚や幻聴がある場合 ➡ 特に幻覚の症状が多い
幻覚の症状:
- 知らない子どもが毎晩自分の部屋で走り回っている
- 蛇がそこら中にいる
幻覚は、神経伝達がうまくいっていない方に起きる症状です。特にレビー小体型認知症でよく見られます。
【対応方法】
- 本人には見えていると素直に受け入れることが大切
- 自分には見えていませんが「見えている」設定で話に付き合う必要があります。
- 決して「見えているのはあなただけ」と否定してはいけません。
- 「蛇がいる!」などと訴える場合は、一旦別の場所に誘導し、ほうきやバスタオルなどで追い払う仕草をしましょう。そうすると、本人も安心し、症状が穏やかになっていきます。
- 幻覚は部屋の明るさが関係している場合があり、暗い場所で起こりやすいため、影をつくらないように室内の明るさを均一化する。
浮気してる!と嫉妬されている場合 ➡ 嫉妬妄想に分類
嫉妬妄想は見捨てられ妄想と似ており、自分の必要性を感じず「自分にとって大事な人を失ってしまうかもしれない」不安感や恐怖心から発症します。対象者は配偶者・家族がほとんどです。
- 妻(夫)が知らない人を連れ込んでいる
- 夜な夜な浮気をしている
上記のように訴えるケースも多くあります。
【対応方法】
- 嫉妬妄想は、不安感、恐怖心、焦り、悲しさなどさまざまなマイナス感情から生み出される症状
- お互いの感情を埋めていくことが大切なので、元々あった信頼関係はほとんどないと判断し、時間をかけて1から信頼関係を築きあげていくことが必要。
- 嫉妬妄想に陥っている間は自分に自信がないので、自信をもう一度持ち直してもらうためには、こちらからの愛情表現が必須です。
- レビー小体という構造物が神経細胞にたまって、認知症などの様々な症状を示す病気
- レビー小体型認知症以外に、レビー小体がたまって運動が障害される病気には、パーキンソン病があります。
- レビー小体型認知症では、脳のもっと広い範囲にレビー小体がたまり、多彩な症状がみられる。
- レビー小体=タンパク質のかたまり
お金に執着し始めたら病気のサインかも
急にお金に執着し始めたり、逆に気前が良くなって、見ず知らずの人にお金をあげたりし始めたら、認知症のサインかもしれません。注意深く、皆で見守って、認知症の早期発見につなげましょう。
初期における行動や症状
- お金を持たせたらあるだけ使ってしまう、お金がない、足りないという訴えが多く、お金を欲しがる……。
- お金を使ったのを忘れてしまい、本人は「使うはずがない」「忘れるはずがない」という気持ちが根底にある。
- 忘れてしまったのに加えて、生活に対する不安感などから、さらにお金に執着する思いが強くなる場合もある。
これは、認知症の初期症状である、「記憶障害」が原因となっています。認知症ではよくある症状ですが、周囲からはお金に執着してお金を欲しがっているように見えてしまうのです。
親が認知症の場合に注意すべきお金の使い方
認知症の症状が出始めたら、どんどん進行していくので、以前はできていたことができなくなっていきます。お金の管理も同じで、以前と比べてお金の使い方が変わったり、お金に執着し始めたら、このまま本人にお金の管理をさせておくのは難しいと考えるべきです。
- 毎回、同じものを買う、毎回買い物に行くたび同じものを買ってくる、家にまだあるのに買ってくる。
- 計画性がなくなり、必要以上にお金を使ってしまう。
- 欲しいと思ったら、欲求をがまんできずに買ってくる。
このような症状が出てきたら、家族で話し合い、お金の管理をどうするのか、よく話し合う必要がでてきます。
お金が欲しいと言った時の具体的な対応方法
- 少額づつ渡す: 1回で全部使ってしまっても大丈夫な金額
- 本人に渡してもよい口座を用意: どうしても通帳や印鑑を持ちたいと本人が希望する場合は用意する。
- 本人のお金がないという不安な気持ちを解消するよう努力する: 認知症の人がお金に執着するのは、不安の表れでもあるので、出来るだけ、その不安を取り除けるように、家族で協力し心を砕く。「お金が欲しい」という訴えのなかに、どんな不安があるのかを考えてあげて、「買い物に行くのにお金がない」と思っているようなら、一緒に買い物に行く、買ってあるものを見せて、まだあるから大丈夫と安心させるなど、気持ちに寄り添うことで不安を解消します。
- 自分でお金を管理して生活をするのは、本人の自尊心につながります。なんでも周囲がやるのではなく、まだできる部分は任せるなど、本人を尊重した対応をすると気持ちが落ち着きます。
初期の認知症で心がけたい家族の対応(介護の観点から)
本人が、一番つらいという事を忘れないこと!
- 無理に叱らない。笑顔で対応し、メモを活用する。
- 紛失物や事故に注意⇒ 常に家族の誰かがサポートをする必要がある。鍵などの大事なものは、だれが管理するのかなど、物のゆくえを把握しておく。
- 相手を尊重する⇒ 認知症であっても、変わらずに尊重すること。
まとめ
- 認知症の初期症状を理解して、認知症の早期発見につなげ、悪化するのを防ぐ。家族の協力は不可欠。
- 「思い込み」は絶対に否定せず、その気持ちに寄り添うことが重要。探し物は一緒に探すと症状が緩和する。
- 適切な対応方法を知ることは、本人の安心感だけではなく自身の心的ストレスの軽減に繋がる。
- 急に、お金に執着し始めたら、不安の表れなので、認知症を疑い、注意深く行動を観察する。
- 認知症は、本人が一番つらいという事を忘れずに、常に相手を尊重する。
認知症の見守りは、実際にやってみたら、とても大変だと思います。本人の気持ちに寄り添うと言っても、自分が見えていないものを見えていると理解し、一緒に行動する。幻覚のヘビをほうきなどで払うふりをするといっても、それがエンドレスに続くと思うとかなり、がく然とします。出来るだけ子供たちには、迷惑をかけたくないと誰しもが、元気な内には思うものです。誰かが、認知症は神様からの贈り物だと言っていました。確かに、自分のひどい状態を分からなくなった方が、心穏やかに老後を過ごせそうです^^;